【四季報の限界】四季報を読んでも分からない「メーカーの実力」

投資手法

このブログ「四季報ラボ」では、会社四季報を参考に銘柄をピックアップし、
その後の株価推移を検証しています。

会社四季報を読むようになって、以前よりも企業について詳しく調べるようになりました。

売上高、営業利益、ROE、PER、事業内容、今後の見通し……。

四季報には、投資判断に必要な情報がたくさん詰まっています。

しかし、四季報を読み込むようになって、逆に感じることがあります。

それは、

「四季報を読んだだけでは、分からないこともかなり多い」

ということです。

今回は、私が仕事を通じて実際に関わる機会のある、

6859 エスペック
6981 村田製作所
6976 太陽誘電

の3社について、実際に製品を扱う側から感じたことを書いてみたいと思います。

もちろん、これは企業の公式な評価ではありません。

あくまで、私自身が実際の業務で製品や部品に触れてきた中で感じた「現場目線」での話です。

エスペックは「痒いところに手が届く」

まずは、

6859 エスペック

です。

エスペックは、環境試験器をはじめとする試験・評価関連の製品を手掛けているメーカーです。

私自身も仕事で評価設備を使用する機会があり、実際にエスペック製の設備を扱っています。

四季報を読んでいるだけなら、
「環境試験器を作っている会社なんだな」
というところまでは分かります。

しかし、実際に使ってみると、もう少し違った印象を持ちます。

私がエスペックに対して感じている大きな強みは、

「メーカーの痒いところに手が届く」

ということです。

評価を行うメーカー側には、

「こういう試験をしたい」
「こういう条件で試験したい」
「この設備と組み合わせたい」
「この部分をもう少し使いやすくしたい」

といった、細かな要求があります。

エスペックの製品を見ると、こうした要求に対応できるよう、
様々な試験条件や用途を想定した製品が用意されています。

例えば、温湿度と振動を組み合わせた複合環境試験装置では、
複数メーカーの振動試験装置とのドッキングに対応しているほか、
振動発生機の大きさに合わせた槽内寸法の拡大など、
試験条件に応じたカスタマイズにも対応しています。 

また、エスペックの環境試験器には、JEDEC規格などに対応した製品もあり、
用途に応じて様々な試験装置を展開しています。 

こうした部分は、四季報の企業紹介だけではなかなか伝わってきません。

出典:エスペック公式サイト
エスペック「環境試験器」

⁠実際に使う側からすると「操作性」も重要

そして、もう一つ私がエスペックを評価しているのが、

設備の操作性です。

いわゆるUI、ユーザーインターフェースですね。

評価設備というのは、買って終わりではありません。

実際に毎日操作する人間がいます。

そのため、

「設定が分かりやすい」
「操作しやすい」
「試験条件を組みやすい」
「必要な情報を確認しやすい」

といった部分は、実際に使う側からするとかなり重要です。

エスペックの製品には、カラータッチパネルを採用し、操作性・視認性を高めた製品があります。
また、LAN接続によってPCなどから監視や運転操作ができる製品もあります。 

私自身、実際に操作する立場として、

「多少高くても、エスペック製の設備を使いたい」

と思うことがあります。

実際、私の感覚では、同様のことができる設備と比較すると、
エスペック製は価格面で高いと感じることがあります。

しかし、

「その価格差を払ってでも使いたい」

と思わせるものがある。 これは、四季報の数字だけではなかなか見えてきません。

村田製作所は「品質にお金を払う」イメージ

次は、

6981 村田製作所

です。

村田製作所は、私の勤務先の製品の一部でも使用しており、
特にコンデンサを使用する機会があります。

コンデンサなどの電子部品には、当然ながら個体差があります。

例えば、規格として±10%という仕様であれば、製品ごとにある程度ばらつくことは当然です。

ところが、私が実際に扱ってきた村田製作所の部品については、

「規格上は±10%なのに、実際に測定するとかなり狭い範囲に収まっている」

という印象があります。

あくまで私自身の業務上の経験からの感覚ですが、

「規格内に入っていればOK」

というだけではなく、

「規格の中でも、かなり安定したものを作ってくる」

というイメージがあります。
これは、実際に使用する側としては非常にありがたいことです。

村田製作所は「品質を買っている」と感じる

村田製作所は、セラミックコンデンサについて、
材料技術や高精度な積層技術を強みとして掲げています。

公式サイトでは、極薄で均一な誘電体層の形成や、
高精度な積層技術によって高い信頼性を維持していること、
さらに原料調合から部品設計、生産設備、計測、検査までを
社内で一貫して行う体制を説明しています。 

こうした技術や生産体制は、

「なぜ品質が安定しているのか」

を考えるうえで、一つの材料になると思います。

実際に使用する側としても、

「村田製作所なら安心して使える」

という感覚があります。

もちろん、村田製作所の製品だから絶対に不具合が発生しない、
という意味ではありません。

しかし、

品質を重視するなら、多少価格が高くても村田製作所を選びたい。

私には、そんなメーカーに見えています。

これも、四季報だけを読んでいたら分からなかった部分です。
出典:村田製作所公式サイト
村田製作所「高信頼・高性能を支える積層セラミックコンデンサ」

太陽誘電も悪いメーカーではない

そして、もう一社が、

6976 太陽誘電

です。

太陽誘電も村田製作所と同じように、コンデンサなどの電子部品を手掛けています。

ここで誤解してほしくないのですが、

私は太陽誘電が悪いメーカーだと言いたいわけではありません。

むしろ、ここで面白いのは、

「普通」と「ものすごく良い」を比較すると差が見えてくる

ということです。

私の業務上の経験では、太陽誘電のコンデンサについては、
「規格が±10%なら、実際のばらつきもそれなりにある」
という印象があります。

これは、決して異常なことではありません。

規格内に入っているのであれば、当然ながら製品として問題ありません。

むしろ、

±10%という規格に対して、±10%近くまでばらつくこと自体は、
普通に考えれば何もおかしくありません。

ところが、

村田製作所の製品を実際に扱っていると、
「規格内に入っている」だけではなく、
「そもそものばらつきがかなり小さい」
と感じる。

そのため、両社を比較すると、
「村田製作所、すごくない?」 となってしまうわけです(笑)。

「村田製作所が異常なだけ」なのかもしれない

ここは今回の記事で一番伝えたいところです。

太陽誘電の製品が規格内に入っているのであれば、それは当然、製品として成立しています。

太陽誘電も、積層セラミックコンデンサについて品質や信頼性に関する情報を公開しており、
静電容量の許容差を含む各種の信頼性試験項目を示しています。
また、生産拠点ではISO9001、多くの商品ではIATF16949の認証を取得しています。 

一方で、私が村田製作所の製品を実際に使っていると、

「この会社、規格の使い方が違うんじゃないか?」

と思ってしまうほど、ばらつきが小さいと感じることがあります。

つまり、

太陽誘電が悪いのではなく、私が村田製作所の品質を非常に高く感じている。

私はそんなふうに感じています。

ここは、あくまで私自身が業務で扱った製品についての個人的な経験・印象です。

太陽誘電の製品全体について、品質が悪い、不具合が多いと主張するものではありません。

出典:太陽誘電公式サイト
太陽誘電「セラミックコンデンサ FAQ」

四季報では「会社の数字」は分かる

ここまで3社について書いてきました。

エスペックなら、
「環境試験器メーカー」
「業績はどうか」
「今後の成長性はどうか」
「PERはいくらか」
ということは、四季報から調べることができます。

村田製作所なら、
「電子部品メーカー」
「コンデンサなどを扱っている」
「業績はどうか」
ということが分かります。

太陽誘電についても同様です。

これは、投資をするうえで非常に重要な情報です。

しかし、

「実際にその会社の製品を使ったらどう感じるのか」 までは、四季報には書いてありません。

実際に使ってみないと分からないことがある

今回紹介した3社は、私自身が仕事を通じて関わる機会がある会社です。

そのため、

「この会社の製品、使いやすいな」
「この会社の部品、品質が安定しているな」
「この会社と比べると、こっちの会社の方が安心できるな」

という感覚を持つことができます。

これは、株式投資をするうえで意外と大きな情報なのではないかと思います。

例えば、

「この会社の製品は実際に使ってみて良かった」

という経験があれば、その会社に興味を持って四季報を開いてみる。

逆に、

「この会社の製品、現場ではあまり評判が良くない」

という経験があれば、それをきっかけに調べてみる。

もちろん、個人的な使用経験だけで株を買うわけにはいきません。

しかし、四季報を読むきっかけとしては、かなり有効です。

四季報だけで完結させない

私は四季報を読むようになってから、
「四季報さえ読めば良い銘柄を見つけられる」
という考え方ではなくなりました。

四季報は、企業を調べるための非常に優秀な入口です。

ただし、

それだけでは企業のすべては分かりません。

実際の商品を見る。

実際に使ってみる。

顧客として考えてみる。

その会社の製品が、現場でどのように評価されているのかを見る。

そういった情報を組み合わせることで、
「数字の向こう側にいる会社」
が少しずつ見えてくるのだと思います。

四季報を読んでいるからこそ、分からないことに気付ける

今回の記事を書いていて、改めて思いました。

四季報は、

「会社を知るための答え」ではなく、「会社を調べるためのスタート地点」

なのかもしれません。

エスペックの設備を実際に使って、
「この会社、顧客の痒いところに手が届くな」
と思ったこと。

村田製作所の部品を実際に測定して、
「このばらつきの小ささはすごいな」
と思ったこと。

太陽誘電の部品と比較して、
「村田製作所が異常なだけなのかもしれない(笑)」
と思ったこと。

こうした経験は、四季報を何時間読んでも出てきません。

だからこそ、

四季報+自分自身の経験。

この組み合わせを、これからも大切にしていきたいと思います。

そして、もし皆さんにも、
「この会社の製品、実際に使ったらめちゃくちゃ良かった」
「この会社、現場では評判いいよ」 という経験があれば、
それは意外と投資のヒントになるのかもしれません。

参考・出典

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